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一旦発症すると元には戻らない。軽度の場合は薬により進行を抑えたり、眼鏡・コンタクトレンズで矯正する。薬物による進行の抑制については、厚生労働省研究班が「有効性に関する十分な科学的根拠がない」と20036月の日本白内障学会に発表するという報道がなされ、物議をかもした。

 

生活に不自由がある場合は、水晶体の白濁を除去して眼内に人工のレンズを挿入する外科手術を要する。昔は球後注射(長い針で眼球の裏側に麻酔液を注入する)や、瞬目麻酔(瞬きを抑えるために長い針を皮膚にさして行う麻酔の注射)を施行し、麻酔時に大きな痛みを伴い、また手術前には15分程度、眼球の上に砂袋等の重りを載せて眼圧を下げる前処置が必要とされることが多かった。強膜(白目)を大きく切開して切開創(傷口)を作成して水晶体(レンズ)をまるごと取り出しており、切開創の幅が12mm程度必要であった。このようなことから、多くの医療施設では手術に際し、入院を必要としていた。近年、医療技術の発達に伴い、白内障になったレンズを超音波で砕きながら除去することで、切開創の幅は眼内レンズの短軸長幅である6mmが主流となり、手術時間の短縮から、点眼麻酔(麻酔液を点眼して行う麻酔法)が可能となった。今日では眼内レンズは折りたたんで挿入する方法が開発され、切開創の幅も3mm以下で行うことが可能となり、ほぼ無痛で日帰りでの手術が一般的となるにいたった。

 

現在では水晶体の内部に眼内レンズを挿入する手術(超音波水晶体乳化吸引術 (PEA) +人工水晶体挿入術(PCIOL))が主流である。この場合、変質により白濁した水晶体の核を超音波で砕いて吸い出し、皮質の処理を行った上で、温存しておいた水晶体嚢(水晶体を包んでいる袋)に眼内レンズを挿入する。水晶体嚢を温存できなかったり水晶体嚢を支えているチン小帯(筋肉の繊維)が弱く、水晶体嚢を利用できない場合は、眼内レンズを縫い付ける場合もある。切開法としては角膜を切る角膜切開法や、強膜から角膜までトンネル状に切り進む強角膜切開法が主流であり、術後も縫合は行わない、いわゆる無縫合手術で行われることが多い。また手術の実時間も1040分で終わり(症状が進行してからの手術の場合、水晶体が固くなり過ぎて超音波で砕くのに時間がかかり、手術時間が延びる場合がある)、いわゆる「日帰り手術」が一般的となり、患者への負担が飛躍的に改善した。もちろん、100%安全な手術というものは存在せず、傷口からの細菌感染や眼圧の上昇による緑内障発症、駆逐性出血などの術後合併症が起こることもあり、入院が必要となったり、不幸にして失明に至るケースも存在するが、白内障手術は眼科の中でも安全性の非常に高い手術の一つである。

 

手術を行わない場合は、最終的には失明に至り、発展途上国においては失明原因の第1位であることは広く知られている。

 

一般的な白内障手術の術中・術後の合併症として、次のようなものが報告されているという。

 

緑内障 (0.22.5%)

後嚢破損 (1%)

駆逐性出血 (0.55%)

水晶体落下 (0.1%)

眼内炎 (0.06%)

その他(網膜剥離、術後高眼圧、嚢胞性黄斑症、視力低下、眼内レンズ偏移、水泡性角膜症、麻酔薬によるアレルギーショックなど)

術中駆逐性出血や術後眼内炎が発生した場合は失明の可能性がある。また、アトピー患者の場合は後嚢や毛様体小帯が弱い傾向にあり、後嚢破損や水晶体落下の危険性がやや上がるという。

 

手術で挿入する眼内レンズは、水晶体のように距離に応じてピントを合わせる能力がない。そのため眼内レンズの度数は、手術を受ける者の生活スタイルに合わせて決定する必要がある。ただし、手術後の「度数」は眼軸長(角膜の中心から網膜の黄斑部までの距離)と角膜曲率半径(角膜のカーブの仕方)、レンズの材質や形状、水晶体嚢の収縮の仕方によって変わるので、必ずしも期待通りの結果になるとは限らない。角膜乱視(角膜のゆがみ)や一般的な眼内レンズが単焦点であることから、多くの場合は眼鏡等の補助は必要である。1990年代頃に「多焦点」の眼内レンズが使われた時期もあるが、遠くも近くも「まあまあみえる」ということで、最近ではほとんど使われていない。 日常生活が眼鏡なして過ごせるようにという意味から、多くの場合は2m前後にピントが合うように計算して眼内レンズの度数を決定する。読書用と運転等用の眼鏡を補助的に使用することになるが、水晶体嚢を支える根元の毛様体という部分が動くことで、多少レンズの位置が前後することと、乱視により焦点距離に幅が生じることなどから、特に裸眼視力が非常にいい場合や日常生活状態によっては眼鏡の補助を必要としない場合もある。片目だけ手術を行う場合、手術をしない方の目に強い近視や遠視がある場合は、左右のバランスをとるために手術を行わない目に近い度数で眼内レンズを決定する。そういった場合や、角膜乱視が強い場合など、裸眼視力が弱い場合は眼鏡等の常用が必要とされる。遠くも近くも眼鏡なしで見えるようにと、片眼は遠くに(優位眼を選択することが多い)、片眼は近くにピントが合うように眼内レンズを決定する場合もある。

(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より)

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